「こうして見るとさぁ、弟くんって転校生には見えないってゆーか、存在感ありすぎて不思議なくらいだよね」
「……あいつは、特別だから」
「え?」
ぼそっとつぶやいたあたしの方をふり返る彼女。
が、次の瞬間には再び視線を戻していた。
飛びあがるほどの怒鳴り声が、外で響いたからだ。
「神木ぃ―っ!!」
ドスのきいた声の主は、この中学で一番怖いと言われている、体育の山内先生だった。
「お前ら、こんな所で溜まってたのか! さっきの授業またサボりやがって!」
くたびれたジャージの袖をまくりながら、非常階段に突進していく先生。
床に広げていたお菓子や雑誌をすばやく片付け、バタバタと立ち上がる那智たち。
その様子を見て、あたしの隣の女子が「あちゃ~」と肩をすくめる。