うかつだった。
あたしは少し、神木のおばさんを見くびっていた。
『ねぇ、藍ちゃん。もしかして昨日、那智の部屋にいた?』
今朝、洗面所で顔を洗っていたあたしの背後に立って、おばさんはそう言った。
『え……? いた、けど』
濡れた顔のまま、鏡の中で目が合う。
昨夜あれだけ爆笑していたあたしたちの声は、おばさんにも聞こえていただろう。
だから指摘されても、最初はたいして驚かなかった。
『それが何? すぐに自分の部屋に戻ったんだからいいでしょ』
『……でも、那智の部屋から2時間くらい、ふたりの声が聞こえてた気がするんやけど……』
ギクリとした。
同時に、ゾッとした。