「えっ……!?」


次の瞬間にはドアが閉まり、あたしは部屋の中にいて。


だけどそれは、見慣れた自分の部屋じゃなくて。




「廊下は走っちゃいけませーん」



「……那智」



よろけるあたしの両肩を支えた那智が、意地悪な顔で見下ろしていた。




「今日はまた一段と派手にやってたやんけ」



肩から手を離し、那智が言う


……さっきの、聞こえてたんだ。


あたしの怒鳴り声も。
グラス割った音も。



あたしはいじけた子どものような気持ちになり、スカートをぎゅっと握った。



「あたし……神木のおばさん、嫌い」



床をにらみつけ、低い声を吐き出す。



「あんたのお母さんだけど、大っ嫌い」


「……」