「ね、藍ちゃん。ご飯食べないなら、梅ジュースは? 今回のは上手に作れたから――」


「いいかげんにしてよ!」



おばさんが差し出したグラスを、あたしは無意識に手で払ってしまった。


宙に飛んだグラスが床で砕け、甘酸っぱい匂いが辺りに広がった。



「あ……」



ここまでするつもりじゃなかったのに。


だけどもう後の祭り。

おばさんは真っ赤な目をして、グラスの破片を見下ろしていた。



「……っ」



あたしは何も言わず台所を飛び出した。


バタバタと廊下を走り、自分の部屋のドアノブに手をかける。


そのとき、急に隣のドアから伸びてきた手が、あたしの指をつかんだ。