これ以上話をするのも億劫で、あたしは再び窓の外を見やった。
その視線の先。
向かいに立つ校舎の、外側にある非常階段。
1階と2階の間の踊り場で、男子グループがたむろしているのが見えた。
「あ~っ、あれ、弟くんじゃない?」
あたしとほぼ同時に気づいた彼女が、窓から身を乗り出して指差す。
「ほら、やっぱりそうだ。ね?」
「……」
「てか弟くん、遠くから見ても目立つよねぇ」
こんなミーハーっぽい女と同意見なんて悔しいけれど
たしかに、あたしもそう思う。
那智は、無条件に人を惹きつけるんだ。
たとえば周りにいる男子たちのように、髪を染めているわけでも、大声で騒いでいるわけでもないのに
ただそこにいるだけで、人の心をとらえてしまう。
限りなく原色のような
無色の存在。