しばらくの間、那智はじっとあたしを見つめたまま、何も言わなかった。


そして長い沈黙のあと、

思いのほか、あっさりとした声で。



「別にそれは、ワガママではないやろ」


「……へ?」


「だいたい、“他の子”って何やねん」


「痛っ」



パシッとデコピンされて、あたしは素っ頓狂な声を上げた。



「なっ、何すんのっ」


「俺がいつ、他の女を描くって言うた?」



え?




「俺はお前しか描けへん。そのくらい、とっくに分かってろや」


「……」



そんなの、分かんないよ。

分かるわけないじゃん。


那智はいつも、はぐらかして。


あたしばっか、乱されて……。