暴れるのをやめたあたしを那智は満足そうに見おろし

そしてふと、何かに気づいたように体をかがめた。



「血、出てる」


「え?」



あたしの足もとにしゃがんだ那智が、そっと膝小僧に触れた。


そこには、さっき転んでできたスリ傷。



「痛いか?」


「…痛く――」


――ない。と答える前に、ピリッと焼けるような痛みが走った。


うっすらと血がにじむその場所に、那智の舌が這っていた。



「何…っ」



制止の言葉は、次の舌の動きで封じこまれて。


驚きと、痛みと、言い知れぬ感覚に襲われ、視界がぐらぐらと揺らいだ。