間近で見た漆黒の光。
出逢ったときから変わらない
世界を止める那智の瞳。
思わず、たじろいでしまった。
「……っ」
視線を合わせたまま、那智の指がゆっくり、あたしの手の中に侵入してくる。
握りしめていた拳が徐々に開かれ、あたしは抵抗する力を失っていく。
投げてやろうと思っていた絵具は、あっさり那智に奪われて。
そして彼は、その絵具を見て微かに笑うと
「藍色」
そう言って、コトン、と静かに棚に置いた。
横目で見るとそれはたしかに、深い濃いブルーの絵具だった。
――藍色。
そんなただの言葉の響きすら
那智から聞けば
胸が苦しくなるなんて。