「来んなって言ってんじゃん!」
「ほんだら、なんで泣いてんのか言えや」
「あんたには関係ないっ!」
……関係、ないよ。
あまりにも
あまりにも、あたしの独りよがりすぎて……。
「あんたになんか、聞いてもらいたくもないっ…!」
自己中で。ずるくて。乱暴で。
熊野くんにはあんなことしたくせに、自分は他の女に簡単に触れさせて。
ちっともあたしのものじゃなくて。
だけどあたしはこんなにも、那智のもので。
「…最低ッ!!」
棚に右手を伸ばし、そこにあった油絵の絵具のチューブをつかむ。
思いきり腕を振り上げ、那智に投げつけようとしたとき。
「藍」
あたしの手を、那智の左手が包みこんだ。
すぐ目の前に、那智がいた。