あ……。
あたしの横をすり抜けて那智に駆け寄った彼女を見て
直観的にわかってしまった。
この子。
那智のこと、好きだ。
「いきなり暴力振るうなんて、何があったの!?」
彼女は那智の正面に立ち、正義感の強い目で見上げた。
その横で、よろよろと立ち上がる熊野くんに、あたしは今すぐ手を貸すべきなんだろうけど。
足が動かなくて。
目が勝手に、那智とあの子を見てしまって。
「ねぇ、那智くん!?」
彼女の両手が小さな拳を作り、訴えるように那智の胸元を叩く。
その仕草にどこか媚のようなものを感じるのは、あたしの目がおかしいんだろうか。
“他人”だからできる仕草
“姉と弟”じゃないから、含まれる媚。
……やめて。
気安く触んないでよ。
あたしの那智に
勝手に触るな。