「……ごめん、ね」
「いや、別に。俺の方こそ、いきなりごめん……」
「……」
気まずい空気。
那智の言うとおりだったな。
今まで気づかないで、あたしってやっぱりアホなんだろうか。
早く片付けて教室に戻ろう、と再び棚に手を伸ばしたとき。
「絶対、もったいないよー」
美術室の方から声が聞こえた。
誰か入ってきたらしく、ドア越しに足音も聞こえてくる。
「せっかく才能あるんだから、那智くんは描き続けるべきだと思うの」
……那智?
女子の声ではっきりと発音されたその名前に、あたしの心臓が嫌な音をたてた。
「うちの美術室って、けっこう設備整ってるでしょ?」
「んー? あぁ」
「ここならきっと、いい絵が描けるよ」