ところが荷物が多すぎて、絵の具の箱が床に落ちてしまった。
とっさに拾ってあげると、「ありがとう」と熊野くん。
が、明らかにひとりで運ぶのは大変そうだ。
「あの、もしよければ
……手伝おっか?」
「ごめんね、こんなことまで手伝ってもらって」
美術室の奥にある準備室で、熊野くんは何度もそう言った。
「今日中に、棚の整理をしときたくてさ。桃崎さんがいてくれて、本当に助かった」
絵の具や紙の匂いに包まれた、せまい準備室。
天井まで届く棚には、所せましと画材が並べられていて、
あたしは熊野くんの手伝いで、その整理をすることになった。
「あ、高い所は俺がやるよ」
「ううん。台に乗れば届くし」