4月――…




「桃崎さん。
ねぇ、桃崎さん」



「あ、はいっ」



ぼんやりと頬杖をつき外を見ていたあたしは、2回名前を呼ばれたところで、やっと気がついた。



クラス替えをして間もない、騒がしい教室。


窓際に座るあたしの横に立っていたのは、名前も知らない女の子。



「……何?」



つい、警戒心が声に出てしまった。

自慢じゃないけど、女子から嫌われることはあっても
親しげに話しかけられるなんて、めったにないんだ。


そんなあたしの警戒を気にもせず、その子は茶色い毛先をもてあそびながら口を開く。



「2年の転校生って、桃崎さんの弟ってホント?」



……あぁ、なんだ。

目的はあたしじゃなく、あっちか。


それにしても情報が早いこと。