「あぁ~……思い出すと恥ずかしい」
頭を抱えるあたしに
那智がニヤッと笑う。
……あ。久しぶりに見た。
那智の、意地悪な笑顔。
あたしを困らせるのが大好きな、性悪で、だけど極上に甘い笑顔。
「別にええやんけ。キスくらい」
「でも、那智の実のお父さんに見られてたんだよ?」
「他人やったらええんか?」
「そりゃあ、その方が――」
マシ。と言おうとしたところで
いきなり唇をふさがれた。
まさかそう来るとは思っていなくて、完全に無防備だった。
「……ちょっ…な、何……」
あたしは顔を熱くして、キョロキョロと周りを見る。
電車の中はガラ空きで、どうやら誰にも見られずにすんだみたいだけど。
「ハハッ。やっぱりお前の反応、おもろいなー」
「ありえないっ。バカ那智!」