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「……驚いたね」



病院を出て、A県を去る電車の中で、あたしはしみじみと言った。



「まぁ俺は、親父がお前のバイト先に行ってたことの方がビックリしたけどな」



となりに座る那智は、どことなくバツが悪そうにつぶやいた。



「でもさ……あのとき、見られてたんだね」


「あのとき? あぁ、公園か」


「うん……。ちょっと恥ずかしいなぁ」



だって確かあのとき、あたしたちは子どものくせにキスしようとしていたんだ。



――『俺の目ん中、何か映ってるか?』



那智にそう言われて、あたしは顔を近づけていって……。


でももう少しで唇が触れそうになったとき、後ろで草が揺れる音がして、やめたんだっけ。


てっきり猫だと思ってたけど、あれはおじさんだったんだ。