あたしが昔、おじさんを助けた……?
「実は僕は離婚したばかりのころ、ずいぶん荒れていてね。
故郷に戻ってみたものの、前の妻に未練たっぷりだったんだ。
そしてある日、とうとう限界が来て、自殺を思いついた」
“自殺”という言葉に、あたしと那智は息をのんだ。
「僕は星名島に渡った。
どうせなら最後の当てつけとして、彼女が暮らす星名島で死んでやろうと思ったから。
山の中には小さな公園があってね、そこで首を吊るつもりだった。
……だけど、先客がいた」
それがあたしと那智だったと
おじさんの温かいまなざしが語っている。
「夜の公園で、那智が藍さんの絵を描いていたんだ」