一瞬だけなら、中のドレスを見たことがある。
中学3年の雨の日だった。
コソコソとこんなものを用意して、再婚の準備をすすめていたことが許せなくて
――『なんで…っ、あんたみたいな女がこの家にいんのよ!』
逆上したあたしは、おばさんにひどいことを言ったんだ。
その翌日にふたりが死んでしまうことも知らずに。
「開けてみろよ、藍」
斗馬くんにうながされ、あたしは震える手を箱に伸ばした。
そっとふたを持ち上げる。
中から現れたのは、見覚えのある純白のレース。
そして――
花柄のメッセージカードがそえられていた。
おばさんの字で、たった一言。
『未来の藍ちゃんへ』