斗馬くんは「だましてゴメン」と言ったけど
本当は、あたしのためにわざと嘘をついて試したんだと思う。
優柔不断なあたしは、何かあるたびにグズグズと悩んでしまうから。
ここでハッキリ決断させることが、今後のあたしのためになると思ったんだろう。
……こんなにも優しい斗馬くんの手を振りきって
あたしは那智を選ぶんだ。
もう、迷わない。
立ち止まっても、過去に押しつぶされそうになっても。
「藍、立てるか? そろそろあいつの病室行こう」
斗馬くんが声の調子を切り替えて言った。
「え、那智も入院してるの?」
「足の骨が折れてるらしいんだ。
藍を助けるためにガケを降りたとき、ムチャしたみたいだな」