「助けてもらったこと、すごく感謝してる。
斗馬くんを好きになった時間は嘘じゃなかったよ。
でも、わかったの。
あたしは那智への想いを断ち切ることはできない。
もう会えなくても…この先もずっと、あたしは彼が好きだと思う」
「……そっか」
斗馬くんはあたしの手を離し
そして急に、さっぱりした笑顔を咲かせた。
「さっきの、嘘だから。
藍を助けたのは俺じゃなくて、あいつだよ」
「え?」
「だまして悪かった。最後に1回くらい、ズルしてみようと思ったんだ。
俺が助けたことにすれば、また付き合えるんじゃねぇかと思って。
でもお前、もう決心したんだな。
ここまで完敗だと逆にスッキリしたよ」
ありがとな、と微笑む彼。
あたしの胸が急激に熱くなった。