すぐそばに、あの携帯があった。 どうにか腕を伸ばし、それをつかむ。 適当に親指が押したのは、アドレス帳のボタン。 切り替わった画面に、 【メモリNo.000――藍】 と、文字が表示される。 「那智……っ」 やっぱり那智の携帯だったんだ。 ……この島に、いるの? この場所にやって来たの? 「那智……どこ……?」 雨と泥で汚れた体が重い。 全身が激しく震え始める。 息が浅くなり、奥歯がカチカチと鳴る。 「那智――…ッ!!」