「寝る」 だからもう出て行け、と言いたげに、ドアの方をあごで指す那智。 困惑していると背中を押され、あっさり部屋から追い出された。 「那智っ……」 バタン。目の前でドアが閉まる。 こっちの気持ちなんか、まるでお構いなしに。 部屋に戻ると、開けっぱなしの窓から夜空が見えた。 「あ……」 月。隠れちゃったんだ。 さっきまで煌々と照っていた満月はいつの間にか姿を隠し 今はもう 灰色によどんだ雲の向こう。