あたしが登ってきた道とは反対側から、それは聞こえている。


……あっちは

那智と出逢った山道だ。


12歳のあの夏。

あたしたちが出逢った場所……




あたしは吸い寄せられるように

音が聞こえる方にフラフラと歩き始めた。


豪雨が容赦なく体を打つ。

ぬかるんだ土で靴裏がすべる。



――『最近、雨が多くてね。逆側の山道は地盤がゆるんで危険やから、行かん方がええわよ』



さっき先生から注意された言葉が、頭の片隅で響いていた。


だけどあたしは足を止めることはなかった。



ほとんど何も、考えられなくなっていたんだ。



耳に届く着信音が、少しずつ大きくなってくる。


そして――