こんなあたしを愛してくれた人。


丸ごと愛してくれた人が。


ちっぽけな人生の、ほんの一瞬の間だけでも、隣にいた。




「本当に、ありがとう……」


『藍…待て、お前――』


「ありがとう」




そこで電話が切れた。


携帯を耳元から離して見てみると、充電がなくなっていた。


真っ暗な画面に、自分の顔が映っている。




ああ……
あたし、今

すごく穏やかな顔だ。



できれば今ここで

時を止めてしまいたい。


明日になればどうせまた、あたしは涙を流したり、何かを望んだりしてしまうだろうから。


どうか今、この島で。


穏やかな心のまま

時間を止めたい――……