『藍、今どこにいる? 迎えに行くよ』



あたしは携帯から聞こえる斗馬くんの声を遠くに感じながら、目を閉じた。



「……あのね、斗馬くん」


『え?』


「あたし、ずっと考えてたの。
どうしてお父さんたちは、事故に遭ったあの日、A県に向かっていたんだろうって」


『藍……?』



脈絡のないあたしの話に、斗馬くんが不審そうに尋ねた。


あたしはそのまま話を続けた。



「A県には、おばさんの故郷の島があるの。きっとふたりはそこに行こうとして、途中で死んじゃったんだよね」


『……』


「あの人たちが死ぬ必要は、なかったのに」


『藍……どうした? お前、さっきから変だよ』