時を越えて。
あの頃の那智に、あたしはもう一度会えたんだ。
11歳の那智が未来を想像して描いた絵。
あたしはこんなにも、彼に想われていた。
充分、愛されていた……。
「ありがとう…ございました」
この絵に会わせてくれた江住先生に、あたしは深く頭を下げた。
涙が一粒、廊下の床にぽたりと落ちた。
「えっ、そんな、たいしたことしてないですよっ」
いつまでもお辞儀しているあたしに、オロオロする先生。
あたしは涙を指でふいて、顔を上げた。
「じゃあ、そろそろ行きます」
「どこに? あなた、この島の人ちゃうでしょう?」
あたしは少し考えて答えた。
「灯台に行ってみたいんです」