あの頃の那智は、今よりずっと声が高かったんだ。
――『藍』
雑草が生えた空き地に立つと、那智の声がどこかから届く気がした。
――『藍』
那智……。
「――アイ…」
ふいに現実の声が聞こえ、あたしは飛び上がりそうになった。
見ると、小学生くらいの男の子が数人、ヒソヒソと話しながらあたしを見ていた。
「あの人、アイやんな?」
「ホンマや。めっちゃ似てる」
こそこそ話のつもりらしいけど、子どもの声は本人が思っている以上によく通る。
……“似てる”?
この子たち、何を言ってるんだろう。
「えっと……何かな?」
話しかけると、子どもたちの肩がビクッと跳ねた。