気がつけばここに来ていた。 電車と船で約4時間。 着いたのは昼過ぎだった。 天気は曇り。海は荒れぎみ。 絶好の旅びより、とは言えないけれど。 島に流れる独特の空気はあの頃のままで、なつかしい。 星名島――那智と出逢った島。 なぜここを“選んだ”んだろう。 自分でもよくわからない。 でもここに来れば、無邪気だったころの自分たちに、もう一度会える気がしたのかもしれない。 あたしは記憶を頼りに、島を歩き始めた。 向かったのは、那智の家があった場所。 今は空き地になっている。