あたしは激しく首を振った。
「嫌だ…っ、目なんか醒ましたら……こんどこそ、ひとりになっちゃうじゃん」
「……」
斗馬くんの顔が、ざっくりと傷ついた表情になる。
こんなにも優しい人に対して、
どうしてあたしは、傷つける言葉しか出ないんだろう。
「なぁ、藍。……今お前の目の前にいるの、俺だよな?
なのに、あいつしか見えてねぇのかよ」
さすがに空しいわ。
そう言った斗馬くんの目が、真っ赤に充血していく。
静かな部屋にふたり分の、鼻をすする音が響いた。
しばらくすると
「……ごめん」
大きな手のひらが、あたしの頭の上にのった。
「ちょっと、取り乱した。
でももう大丈夫だから」