コーヒーをひと口だけ飲んで、斗馬くんが顔を上げた。
「そういやメグちゃんから聞いたんだけど。あいつ、どっか行ったんだってな」
“あいつ”という呼び方に、胸が騒ぐ。
「その様子じゃ藍も、行き先は知らねぇんだ」
「……メグちゃんに頼まれたの?」
「いや。あの子は意地でも藍に頼ろうとは思わねぇだろ」
――『あんたたちなんか、バチが当たればいいんだ!!』
泣き叫ぶ彼女の姿が、脳裏によみがえった。
「あ、でもこないだのは、メグちゃんも言いすぎたって反省してると思うよ。
まあ状況が、状況だったしな」
あたしの顔が曇ったのを見て、斗馬くんがフォローするように言った。
そして斗馬くんは一度、姿勢を正すと
彼らしい誠実な表情であたしを見つめ、口を開いた。