「藍、最近また学校休んでるよな。家に引きこもってるみたいだし……
それって、俺がいるから?」
「……」
那智がいないから。
そう思ってしまうあたしは、やっぱり間違ってるのかな。
でも、那智がもういないから
あたしの心が、たぶんちょっとだけ壊れちゃったんだ。
――『終わらせるために、抱いてほしいの』
えらそうにあんなことを言ったけれど。
たった一晩で終わらせるなんて、そんな器用なまねができるなら、とうの昔に解き放たれていたはずだよね。
那智の唇も
那智の手のひらも
結局、何ひとつ忘れられないのに
優しく抱かれたこの体には、何の跡も残っていない。
あたしは斗馬くんの前にコーヒーを置いた。
朝の光を浴びる彼の顔は、以前より少し大人っぽく見えた。