「那智……那智っ……」
キスするのと、服を脱ぐのと、ベッドに移動するのを同時にせわしなく行いながら
その合間にくり返し名前を呼ぶ。
涙は次から次に流れた。
だけど那智はもう、「泣くな」とは言わなかった。
これは終わらせるための儀式。
抱えてきたものを全部流し
空っぽになるまで流しきって
明日から、那智のいない世界で生きていくための。
「藍……。顔、見せて」
あたしを抱きながら、那智は切ない声で何度もそう言った。
そして記憶に焼きつけるように、まっすぐな視線を降らせた。
変だよ、那智。消えていく女の顔なんか覚えておく必要ないのに。
そのくせ、あたしに触れる手は優しすぎるほど優しくて。
けっして“跡”を残さないような抱き方で。
それが悲しくて、また泣いた。