言葉にしなくても伝わった願いに、那智の体がこわばった。



「……アカン。今さら“そんなこと”しても、何も始まらんやろ」


「いいよ……それでも」



ううん、それだからいいの。



「始めるためじゃなくて……

“終わらせるため”に、抱いてほしいの」




那智は無言で、ギュッとあたしを抱きしめて

それから自分の方に、あたしの体を向き直らせた。



最初は、触れるだけのキスだった。


とまどいと遠慮が、その優しい口づけから伝わってきた。



いったん唇を離し、うっすらと目を開けて見つめ合うと

こんどは急に、むさぼるような激しさで奪われた。



長い間あたしの中で抑えていた感情が、一気にあふれ出した。