――『最後にお前の絵、描かせてくれへんか? それが完成したら、出ていくから』




キッチンに続く廊下がやけに長く感じて、あたしは立ち尽くした。


明日からは那智がいない。

もう「藍」って呼んでくれない。


あの瞳に、あたしを映してくれないんだ――…。



こらえきれず涙がこぼれたとき。

唐突に、強い力で後ろから抱きすくめられた。



「泣くなって言うたやろ」


「……っ」



じゃあ、そんな風に抱きしめないでよ。


よけい涙が止まらなくなる。


那智なら知っているでしょう?


あたしはそんなに、強くないんだよ。




「……那智、お願い。
最後に……」


最後に、あたしを――