……那智。
ずっと一緒に暮らしてきたのに、こんな風に向き合うのは、ずいぶん久しぶりだね。
でもね、あたしはどんなときも那智の存在を感じてた。
那智が朝帰りばかりしていたときも。
友達と部屋で騒いでたときも。
そしてメグちゃんを抱いたときも。
辛かった。
苦しかったよ。
いっそ、この目も耳も壊れてしまえば、何も知らずにすむのにって思ったりしたよ。
だけど……今は
あたしの五感全てで、もっと
那智を感じていたくて……。
「……っ」
絵を描いてもらっている最中なのに、ふいに涙がこぼれた。
那智は筆を置いてあたしのそばまで来ると、不器用なしぐさで涙をぬぐった。