それはたぶん
ふたりが共に過ごした中で
最も悲しくて、静かで
温かい日々だった。
あたしたちはその日から一歩も外に出ず、学校にも行かず
斗馬くんに「ごめんなさい」とメールを送ると、携帯の電源も切って過ごした。
食事は家にあるわずかな食材で、簡単なものを作って一緒に食べた。
起きている時間のほとんどを、絵を描くことに費やした。
あたしも那智も、不思議と疲れは感じなかった。
この時間がどれだけ大切なものか、わかっていたから。
那智の瞳があたしだけを映し
あたしも那智だけを見つめる。
彼の声を聴いて。
彼の絵具の匂いに包まれて。
あたしたちだけが、そこにいた。