「……。寒く、ないんか?」
この場に不釣り合いな心配をしてくれる那智。
可笑しくて、あたしは少し笑った。
「うん、大丈夫」
ふっと微笑んで、那智が再びキャンバスに向き直る。
あたしはボタンをすべて外して、残りの服もぜんぶ捨てた。
生地がするすると肩先から滑り落ち、パサッと床で音をたてた。
露わになった肌が空気に触れると、寒くないのに鳥肌がたつ。
ありのままのあたしは今
那智の瞳にどう映っているんだろう。
「……座って」
あの頃と同じように与えられる指示。
そして那智は左手に鉛筆を持ち
あたしたちの最後の時を
刻んでいった――……。