『何? 今の』
うろたえるあたしとは裏腹に、那智は落ち着いた様子で。
『猫やろ』
『あぁ……そっか』
……ていうかあたし、なんであんな事、しようとしたんだろう。
正気に戻ったとたん、自分の行動をふり返って驚いた。
気まずくて顔をそむけていると。
『ほれ。やるわ』
そう言って那智が差し出したもの。
スケッチブックから切り取った
あたしの絵だった。
「――まさか、今も持ってるとは思わんかったなぁ」
14歳の那智が、しげしげと絵を見つめながら言う。
「……もう、いいでしょ? 返してよ」
「わかった、わかった」
やっと絵を返してもらい、あたしはのそのそと体を起こした。