「那智……」
あたしはベッドから立ち上がり、彼の後ろに立った。
「あぁ、すぐに準備できるから座って――」
あごでベッドの方を指そうとした那智が、息をのむ。
あたしは彼をまっすぐ見つめながら
自分のシャツのボタンをひとつずつ外していった。
「藍」
厳しい声で呼ばれた。
「何してんねん」
「……描いてほしいの」
那智のまなざしから困惑が伝わってくる。
「これが最後なら、ありのままの姿を描いてもらいたいの」
恥ずかしいことをしているとは思わなかった。
できることなら服だけじゃなく
この皮膚も、この骨も。
すべてをはぎ取って、あたしの心をさらけ出したかった。