守りたかったのは些細なもの。


大人にとっては
ままごとの様な

だけど自分たちにとっては
かけがえない宝物だった。



恋を、恋と呼べればよかった。


幼いつぼみを、ゆっくり育てて

ふたりで花を咲かせたかった。



なのになぜ

あの頃のあたしたちは――…





「藍。……俺、
この家、出ていくから」




かすかに唇が触れたまま
那智がつぶやいた。



「どうせ高校行く気ないし。知り合いの店で働かせてもらう」


「……」


「やから、もうホンマに……
俺のことは忘れてええから」


「……うん」




お父さん、おばさん。

ごめんね。


やっぱりあたしたちが姉弟として生きていくなんて、ムリだった。


そばにいたら求めてしまう。

そして周りを巻き込んでしまうの。