『俺の目ん中、何か映ってるか?』


『……』



あの頃、あたしより少し背が低かった那智。


あたしは魅入られたように、その両目をまっすぐ見つめた。


深い、黒い、澄んだ瞳。


映っていたのは月灯りと、

そして……



『……あたしの、顔』



ふ、と那智が小さく笑った。



ふたりの鼻先が触れ合って、そこから体温が流れ込んだ。


キスの意味すらよく知らず

だけど当たり前のように

あたしは那智に、唇を近づけていった。



そのときだ。



ガサッ――、と背後で物音がして、あたしは弾かれたように那智から体を離した。