「お前らにとってはお互いが唯一の身内なんだろ。
死んだ親のこと考えれば、普通は恋愛感情なんか抱けねぇよな。
だから藍が好きだった男はそいつじゃないって、俺、自分に言い聞かせてたんだ。
……さっきこの目で、お前らが抱き合ってんの見るまでは」
斗馬くんは普段、とても優しい言葉を選ぶ人だ。
耳に心地いい、温かい言葉を選んでくれる人。
そんな彼の、いつになく突き刺すような言い方に、あたしは震えが止まらなかった。
傷つけてはいけない人を
あたしは傷つけてしまったんだ。
全員が黙りこんでいると、メグちゃんがこちらに歩いてきた。
「藍さん」
うつむいていた顔を上げると。
突然、火花のような痛みが、左の頬で弾けた。