斗馬くんが那智の方に向き直った。



「お前らが一緒にいても、ふたりで堕ちていくだけだ。

お前に必要な女の子は、他にいるんじゃねぇのかよ」



「斗馬くん……?」



状況が見えなくて間に入ろうとするあたし。


斗馬くんはそれを手で制し、那智をにらみつけた。


那智は静かに斗馬くんをにらみ返すと

ポケットから携帯を取り出し、どこかに電話をかけ始めた。



「――俺」



いったい、誰にかけているんだろう。



「さっさと出てこいよ。どうせ近くにいるんやろ?」



え……?


那智は言うだけ言うと電話を切って、ポケットに携帯をしまった。


たっぷり30秒以上の静寂。


いつの間にか太陽は姿を消して、まるで昨日までの続きのように小雨がぱらぱら降り始めていた。


誰も来ないんじゃないかと思った、そのとき。

ためらうように、その人影が現れた。