――…気づいたときには、部屋は明るかった。


東向きの窓から差しこむ光が、朝だということを教えてくれた。


熱はかなり下がったらしい。

久しぶりに体が軽く感じる。



部屋の中を見回すと、人影はなかった。


床に吐いたはずのものはキレイに掃除されている。



そのとき、玄関の鍵を閉める音が、廊下のむこうから聞こえた。


耳をすますと、アパートの外の階段を下りていく足音も。



……斗馬くん?


あたしを助けてくれたのは、斗馬くんだったんだろうか。



ぼんやりと考えて、


――違う。


すぐに思い直した。



斗馬くんが鍵を持っているはずがないんだ。



じゃあ……


あの遠ざかる足音は。



あの、温かい腕は。