『……藍』
スピーカーから聞こえた
その低い声に
あたしは子どものように
泣いてすがった。
「助けて――……」
とても温かかったことだけは
ハッキリと覚えている。
玄関の方からあわただしい物音が聞こえてきて
床でぐったりするあたしを、2本の温かい腕が包みこんだ。
そのあとはたしか、ベッドに寝かされて
スポーツドリンクのようなものをストローで少し飲まされた。
おでこにのった冷たいタオルが心地よかった。
熱におかされながら、あたしは何度も怖い夢を見た。
そのたび誰かがあたしの右手を握ってくれた。
あたしはその手の感触に安心し、再び眠りに落ちていった。