山の中の小さな公園。

ホタルの光の不規則な揺らめき。

夜中に神木家を抜け出して、子どもだけで共有した秘密の時間だった。



『那智の瞳の底にもさ、キレイな風景がいっぱい詰まってるんだよ、きっと。

でなきゃ、こんなにキレイな絵、描けるわけないもん』


『キレイな絵って、ただのエンピツの落書きやんけ』



那智はあきれていたけれど、あたしは真剣にそう思っていた。


だって本当に、美しい絵だったから。


つまらない、くだらない
ちっぽけなあたしが、

那智の描く世界の中では、なんだか輝いて見えたから。


もっと那智の瞳に映りたいって、思ってしまったから――…。




『そこまで言うんやったら』



那智はあたしの手からスケッチブックを奪い、

そして、息がかかる距離まで顔を近づけた。