那智の唇がやっと傷口から離れ
ぽつりと、つぶやきが降ってきた。
「……こうやって」
あたしは息を乱しながら、その赤い唇を見上げた。
「お前の血、もらったら……
本物の姉弟になれんのか?」
那智――……。
あたしも何度それを願ったことだろう。
いっそホントの姉弟なら
早くあきらめもついたのに。
あたしたちを縛りつけたのは
血の繋がりでも、戸籍でもない。
お父さんたちが死んだあの夜に
背負った、十字架だったから。
那智があたしの腕を離すと
ドサッ……と音をたてて、あたしは地面に落ちた。
帰って行く那智を、こんどは引き止める気力もなかった。
規則的だった足音が、ふと遅くなり
あたしは顔を上げた。