「ムリすんなよ。頭打ってっかもだし、病院行った方がいい」
斗馬くんは携帯を取り出すと、「あ~、くそっ」と舌打ちをした。
「ここ圏外だ。
藍。ちょっと電話してくるから、俺が戻るまで動くなよ」
てきぱきと指示を残し、走って行く斗馬くん。
足音が遠ざかっていく。
そして、おとずれた沈黙。
公園の豊かな木々が、ザァッと、風で波を打った。
「……」
あたし……気が動転して、こんなところに来ちゃったけど。
よく考えたらとんでもない行動に出てしまったんだ。
斗馬くんもいるのに……。
――『藍っ!!』
さっきの那智の声が、頭の中を何度も反響する。
と、そのとき。
視界のはしで、那智がふらりと立ち上がるのが見えた。