「藍、大丈夫か?」
差し伸べられた斗馬くんの手を取らず、「うん……」と答えると
彼の視線は、那智の方に移った。
那智は地面に片ひざを立てて座り、痛みに顔をしかめている。
所々に血がにじみ、目の上を切ったボロボロの姿。
あたしの心臓が締めつけられた。
「立てるか?」
斗馬くんは手を貸そうとして、
「……あれ?」
那智の顔をまじまじ見つめた。
「お前……」
その様子を見ていたあたしの胸に、違和感が引っかかる。
知り合い……?
いや、まさか。
那智は「あ?」と不機嫌に斗馬くんをにらみ、自力で立ち上がろうとする。
が、途中でガクッと膝が折れ、再び地面に崩れた。
「那智……っ!」