割り込んできた声は
斗馬くんだった。
あたしの前髪をつかんでいた男が手を離し、「田辺!?」と驚いた。
「いくら先輩でも、俺の彼女に手ぇ上げるのは勘弁してもらえます?」
走ったばかりで息を切らしながらも、冷静な口調で男を牽制する斗馬くん。
「知り合いか?」
と、男の仲間たちがざわめきだす。
「あ……あぁ、中学の後輩。
おい田辺、ジャマしてんじゃねーよ。女連れてさっさと行け」
「ムリっすねぇ。そいつ、彼女の弟なんで」
動じない斗馬くんに、しだいに男たちは沈静化していく。
「それとも、ソッコーで通報してもいいって言うんなら、おとなしく帰りますけど?」
このセリフはさすがに効果があったようだ。
男たちはもう十分、殴り足りていたらしく
苦い顔で去って行った。