「藍」
何事もなかったかのような、普段通りの那智の声。
彼はベッドから降りて、落ちていた絵を拾う。
そして床に座ると、放心状態で寝そべるあたしの横に、ちょこんと頬杖をついて。
「この絵、ずっと大事に持っててくれたんや?」
「……」
違うって、言ってんじゃん。
たまたま机の中に入れてただけって、言ってんじゃん。
……言ってんのに……。
「うん……。ずっと……持ってた」
那智のバカ。
あたしの心、丸裸にしないでよ。
もうすぐ姉弟になるんだよ?
その前にこんな気持ち、自分の中だけで殺してしまいたかったのに。
「ははっ。やっと認めたか」
そう言って那智が、急にヤンチャな笑顔で笑うから。
まぶしくて。
あたしはやっぱり那智に囚われて。
離れられない、と思った。